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「今日が土曜だったらな」
残念そうに笑ったあと、彼は軽く唇を重ねてきた。
一瞬だけのキスで唇を離して、彼は私を抱き寄せたまま、にっこり微笑んで私の顔をしげしげと眺めた。
土曜日だったら……?
黙って彼を見上げて心の中で問いかけると、自然にまた唇が重なった。
「送っていかないと……」
唇の隙間から漏れた呟きとは裏腹に、今度は長く深く、彼の唇が私を愛撫する。
もう一方の腕でさらに腰を引き寄せられ、全身が密着した。
彼を渇望する心が、膝を割って入ってくる彼を迎えるように、私の脚を自然と開かせる。
燃えるように熱いのは、どちらの吐息だろう?
さまよってはまた絡み合う唇が立てるなまめかしい音が、二人の吐く息に混じってソファを滑り、沈んでいく。
私の髪を絡めるように愛撫する彼の指の感触に酔い、長く細く恍惚の声を漏らしたその時。
閉じた瞼の裏に、あの歪んだ微笑みと肩で揺れる艶やかなカールが浮かんだ。
“彼は私を愛してた”
あの人とも、ここで、こんな風にキスしたの……?
その指で、あの人を愛したの……?
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