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どっしりとした扉が両側に開かれると、鮮やかなバージンロードがまっすぐに祭壇へと続いていた。
ガラス張りの吹き抜けの向こうに広がる緑の木立からは、雨上がりのさわやかな朝の光が祭壇に降り注いでいる。
通路の両側にはたくさんの友人や恩人の顔が見えたけれど、私は祭壇の前で私を待つ、タキシード姿の彼ただ一人を見つめていた。
数ヵ月前の私は濁った心のまま此処に立つつもりで、そんな自分を忌み嫌い、恥じていた。
この場所も、このドレスも、そして今から指にはめる指輪も、他の人を想い泣きながら決めてきたものだった。
けれど今は、それらすべては彼に出会うための道だったと信じている。
再び響き始めたパイプオルガンの音色に息を吸い込み、ありったけの愛を込め、彼を見つめて微笑んだ。
今日、私は曇りのない心で、ただ一人のためのプラチナを指にはめる。
澄みきった光を浴びる祭壇に向かい、私はまっすぐに歩き始めた。
end.
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