0人が本棚に入れています
本棚に追加
勤続30年にして会社に
コンビニが入った。
時代は変わるものだ。
私はほぼ毎日のようにそのコンビニに通っていた。
ある日、レジの店員が私の顔を見てビックリした表情をした。眼があって分かった。私もどこかで会ったような気がして彼女が気になってつい目で追うようになってしまう。
次に偶然彼女のレジに私が行くと彼女は嬉しそうに笑って話しかけられた。
「お客さんは、ずっとここで働いてるんですか?」
「はい、ずっと」
「もう、30年近く前に私も1年だけここで働いていたんです。その時にお客さんぐらい背の高い人がいて、190センチぐらいある人で、お客さんもそれぐらいありますか?」
「そんなにない」
「何センチぐらいありますか?」
「188センチかな」
「そうですか」
俺は彼女の、ネームプレートを見た。
…いかり…
聞いたことがあるような?ないような?
高校を卒業してこの会社に就職して2年目、彼女は入社してきた。
彼女とは会社が違ったけれど私は彼女の部所へ仕事で毎日のように通い、彼女に話し掛けられるようになった。
「この前、一緒にご飯食べてた中田さんって友達なの?」
彼女は私の同僚が気になっていた。
それが切っ掛けでよく話すようになった。
彼女は中田とは1度電話で話したらしいが話が弾まず、それっきりになった。
「笹林君って巨人って呼ばれてるの?身長190センチもあるの?」
と彼女が笑いながら話し掛けてきた。
「呼ばれてない。190もないよ」
ムッとしても彼女は構わずに
「そうなの?何センチ?」
と質問して来た
「188くらいかな」
仕方なく答えると
「ほぼ190じゃん、かわんないよ」
と言いながらケラケラと悪びれず笑っていた。
私は若い頃この身長がコンプレックスだったのにそれを指摘され、笑われたのに
屈託のない彼女の笑顔に腹を立てるのも忘れて、
毎日彼女と話すのが楽しみになっていった。
彼女は素直で真っ直ぐな人だった。
そんな日々は長くは続かず、半年で彼女達の部所は他の部屋へ移り、広い構内で会うことがなくなった。
まさか?彼女がレジの?
当時、私が20で彼女は19だったと思う。
レジの彼女は若く見えた。人違いか?
最初のコメントを投稿しよう!