精霊の夜

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 ナハトは咳払い――「ニャフン」とわざとらしい感じに――をすると、元のすまし顔に戻った。  「それはともかく……こちらは天野愛梨様ですニャ。中井様とは同い年だそうですニ  「えっと、中井さんですね。よろしくお願いします」  紹介された天野は、丁寧ていねいに頭を下げる。  顔を上げると、何故なぜかフフッっと笑った。  「ん、こちらこそ」  零次は軽く会釈えしゃくをする。  機械的に、である。  ここから全てが動き始めたことを、零次はまだ知る術すべもなかった。  零次は踵きびすを返し、参加人の集まりに交じった。  「何がおかしいのですかニャ、天野様?」  ナハトはきょとんとした表情で訊きく。  「ううん……別に!」  天野は軽い足取りで歩んでいく。  その姿を、満月とナハトは何気なく見つめていた。
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