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空が蒼い。
山に囲まれた天球を限りない灯が覆い尽くす、広大な星空。
その下で、一人の少女はずっとそれを眺めていた。
煌めく光が重なり合い、目を細める。
――いつだって夜空は、こうして綺麗に輝いているのに……どうして、私の心は曇ったままなんだろう?
あの時から、どれくらいの時が経ったのだろうか。
傍からしたら何気無い一日一日が、いつも長く感じてしまう。
何かに心を痛めているだけで、時の流れはそれにせき止められていた。
泣きもした。落ち込みもした。やっていることが手に付かないこともあった。
でも何より辛いのは、その記憶がいつまでも残っていることだった。
何億年という永遠を経ている星たちからしたら、地球の時なんて一瞬にすぎないのかもしれない。
いつもこうして星空を見るのは、その時の流れに身を任せるためだった。
この時だけは、何もかも忘れて、ただ自分の鼓動だけを感じ取っていた。
「無」になる事が、少女にとって一番楽になれる時だった。
ふと見上げると、一筋の流れ星が夜空を走り抜けていた――。
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