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「……? どういう……」
「こういうこと!」
急に体が前のめりになり、零次は少しよろめいた。
――零次が言いかけたところで、不意に後ろから天野が抱き着いてきたのだった。
「……もう、遅いよ。もっと早くに気付いてくれたらよかったのに」
「すまん、ずっと信じられずにいたから、な」
「寂しかったよ。いつか会えるはずって信じてたのに、すぐにどこかに行っちゃうんだもん」
「あの時は家族もバタバタしてたしな」
二人の紡ぐ言葉は、見えない糸でつながれていたかのようだった。
零次は天野と向き合うと、小さな体をそっと守るようにして抱き寄せた。
「……あったかいね。こんなに近くなったの、初めてかな」
「変わってないな、お前も。相変わらず小さいし、顔もそのまんまだし」
「そういうレイ君だって、気難しそうなところはそっくりそのまんまだよね」
茶化すように叩いた憎まれ口は、何故だかとても愛おしく感じた。
長い時を経ていても、一緒にいたいという想いはそのままだった。たとえ、それを忘れていても。
「会いたかったよ。ずっと、ずーっと。レイ君を好きになった、その時から」
「すまない。逃げることさえしなければ、あの時を忘れることはなかったのに」
「いいよ、それでも。こうして会えたんだし。――世界で一番好きだよ、レイ君」
「俺もだ」
顔と顔が寄り添い、唇がゆっくりと重なった。
ほんのりと甘い香りがすると、眩まばゆい光が二人を優しく包み込んでいった。
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