エピローグ

2/4
前へ
/69ページ
次へ
 「……? どういう……」  「こういうこと!」  急に体が前のめりになり、零次は少しよろめいた。  ――零次が言いかけたところで、不意に後ろから天野が抱き着いてきたのだった。  「……もう、遅いよ。もっと早くに気付いてくれたらよかったのに」  「すまん、ずっと信じられずにいたから、な」  「寂しかったよ。いつか会えるはずって信じてたのに、すぐにどこかに行っちゃうんだもん」  「あの時は家族もバタバタしてたしな」  二人の紡ぐ言葉は、見えない糸でつながれていたかのようだった。  零次は天野と向き合うと、小さな体をそっと守るようにして抱き寄せた。  「……あったかいね。こんなに近くなったの、初めてかな」  「変わってないな、お前も。相変わらず小さいし、顔もそのまんまだし」  「そういうレイ君だって、気難しそうなところはそっくりそのまんまだよね」  茶化すように叩いた憎まれ口は、何故だかとても愛おしく感じた。  長い時を経ていても、一緒にいたいという想いはそのままだった。たとえ、それを忘れていても。  「会いたかったよ。ずっと、ずーっと。レイ君を好きになった、その時から」  「すまない。逃げることさえしなければ、あの時を忘れることはなかったのに」  「いいよ、それでも。こうして会えたんだし。――世界で一番好きだよ、レイ君」  「俺もだ」  顔と顔が寄り添い、唇がゆっくりと重なった。  ほんのりと甘い香りがすると、眩まばゆい光が二人を優しく包み込んでいった。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加