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「それで、何か関係があるのか?」
「貴方を、招待しに来たのですニャ」
ナハトは平然と言った。
「…………は?」
零次は思わず拍子抜けした。
そんな体験をしろと? 俺みたいな人間が?
「なんでまた、そんな真似を」
バカバカしい。一体俺をどうしたいんだ。
零次はそっぽを向き、鼻を鳴らした。
だが何もない空間を見ていると、何故だか急に寂しくなってきた。
「幸せに、なりたくないのですか?」
ナハトは真剣な口調になった。顔を向けると、さっきのすまし顔は、何かを見抜いているような鋭い顔つきになっていた。
その言葉は、ずいぶん前にも聞いたような気がした――。
ナハトは、その幸せがどんなものか、知っているのだろうか。
向かい合ったまま、零次とナハトは少しも動かない。
これ以上、ナハトに伝えなければいけない事はあるのだろうか。
「……………………いや」
そんなものはなかった。今はただ、この偶然を信じてみることが一番なのだろう。
それを聞くと、ナハトは微笑んだ。
「お任せくださいニャ」
「……ああ、頼む」
幻の旅行の、契約成立であった。
「『星空トリップ』では、五つの夜を一夜にして巡ることが出来ますニャ。『精霊の夜』から始まり、『豊穣の夜』、『中秋の夜』、『神聖の夜』を旅しますニャ」
つまりは、ハロウィン、祭り、十五夜、クリスマスの順ということだ。
「そしてそれぞれの夜は、違う場で行われますニャ。その他は僕が進行させておきますので、中井様たちはごゆっくりお楽しみくださいニャ」
「それで、気が付くと朝になっているのか」
体験した人々が、口をそろえて言っていた事だ。それこそ夢ではないかと、反論する者も多かったが。
「その通りですニャ。……準備はよろしいですかニャ?」
「ああ」
着替えを済ませた後、深呼吸をした。それ以外は必要の無い事だった。
「では、ゲートを開きます!」
ナハトが肉球を何もない所にかざすと、その周りの空間が開き、異なる空間が現れた。向こう側から、異世界の雰囲気が漂う。
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