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ーータイムスリップ。
それは、物語の中だけでの話のはず。
行き交う人々は着物に髷姿。地面は土でアスファルトは見当たらない。上を見上げれば電線などもなく青空が広がってた。
何かあったわけではない。死にそうにもなってないし、目の前が眩しくもなってなかった。普通に歩いていただけ。線路の下をくぐるトンネルを出たら、夜の暗さから昼間の明るさになっていて、この情景だったのだ。
そして、振り向いた時にはトンネルはどこにも。何が何だか分からない。
パニックになるのを防ぐため、人目を気にせず大きく深呼吸を繰り返した。
「スー、ハー。スー、ハー」
声に出しながらやったから、周りから怪訝な視線を向けられる。服装も服装だし。私は襟にスタッズが沢山付いてて肩の部分に穴が開いてる透け透けの半袖ブラウスに、インナーはオレンジのキャミソールで、グレーのニットのカーディガンを羽織ってる。下は黒のなんちゃってミニスカート、捲ればショートパンツというやつ。黒のタイツに黒のショートブーツを履いてた。ピンクの大きめのバックに、ピンク淵の眼鏡姿。髪はアッシュブラウンでエクステを付けていて4本はアクセントでピンクを内側に入れてあり、コテでランダムに巻いてある。化粧もアイラインをしっかり入れていて睫毛は上下共つけまつ毛で、目を大きく見せていた。口紅はオレンジ系でグロスをたっぷり塗って、ぷるんぷるんな唇を演出させた。
どう見ても周りから浮いていた。だけど今は、そんな事を気にしていられない。
深呼吸のおかげで落ち着いたけど、どうすればいい?
タイムスリップしたなら、ここには私の生活する基盤が何もないということ。
首を傾げ、この先の事をシュミレーションしてみた。まず私に出来ることを考えてみる。21世紀の私は大学生だった。親がそれなりに金を持っていたためバイトの類いはしたことがない。ということは、住み込みで働くのは無理かな。
料理は包丁すら持ったことがない。洗濯も自動ならどうにかなるけど、手洗いなんて嫌だ。手が荒れるし、爪もボロボロになる。男を引っ掛けて専業主婦もダメかな。
体を売る? それこそダメ! イケメンじゃないと話しすらしたくない。
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