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どのぐらい1人で考えていたんだろう。
立ちっぱなしだったため足が痛い。10cmぐらいあるショートブーツのヒールを睨みつけた後、遣る瀬無さから上を向いた。空は、いつの間にか茜色になっている。
街灯ひとつないということは……。
21世紀で生きてきた私は寝る時でさえ真っ暗にはしなかった。これから包まれるであろう暗闇に恐怖を感じ身を震わせる。
物語だったら、主人公がタイムスリップしたら直ぐに有名な人たちと接触するのに。
焦っても仕方ない。こういう時はなるようにしかならないもの。
バックの中からハンカチを取り出し、それを下にして道端に座った。更にチョコレートを取り出し胃の中に収める。
「……」
本当に真っ暗。月も出てない。どっちが空でどっちが地面か分からなくなりそう。
いつもだったらテレビ見たり、パソコンで動画やゲームなどしてたのに……。今は何もやることがない。ただ空を見上げるだけ。
「ーーはぁ」
溜め息が洩れた。
「私……、戻れるのかな?」
「何処に戻りたいのですか?」
独り言に返事をされ、声をした方を向く。
「だ、誰?」
ここに来てから変な目で見られることはあったけど話しかけられたのは初めてで驚いた。しかし暗くて相手が、どんな人か分からない。
声からして男なのは確か。それに、話しかけてきた人の他にもう1人いる。目を凝らしても認知出来たのはそれだけ。
「僕は壬生浪士組の沖田総司と言います」
ーー沖田総司(オキタソウジ)
歴史に詳しくない私でも知ってる名前。彼は幕末を駆け抜けた人だ。
あれ? 新選組だったような……。
壬生浪士組なんて名前は聞いたことがない。嘘を言ってるのかな? それともパラレルワールド的なもので、ここでは名前が違うとか?
「ねぇ、貴女! 聞いてるのですか??」
「ーーふぇ? な、何?」
間抜けな声を発したうえ吃ってしまう。考えてごとしてたから、話しかけられることに気が付かなかった。
「貴女は何者ですか?」
「私は香月遊佐(コウヅキユサ)」
何者と聞かれても名前しか言えない。香月財閥の次女と言っても、この時代では通じるはずないのだから。
「どこの国の方ですか?」
「日本だけど?」
彼らからしてみれば私の格好は変だから、外国の人だと思ったのかな。
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