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私は立ち上がり、男たちを見据える。
「キチガイだったら、どれだけいいか。あなたたちには分からないでしょうが、いきなり知らない場所で、周りが皆昔の格好してるのよ! ホント、このままキチガイにでもなった方が楽よ!」
一気に捲し立てた。
……ヤバイ、泣きたくたってきた。
ここで泣いても状況が好転するわけでもない。意味のないことはしない主義の私は、ぐっと堪えた。
「私を助ける気がないなら去ってくれない?」
何も言わない男たちに背を向ける。
「えーと、屯所に来ますか?」
「沖田殿!!」
沖田総司の提案に斎藤が慌てた。私は振り返り、溜め息を吐く。
「ーーはぁ。とんしょって悪い人を連れて行くところでしょ? 私は、ここにいるだけよ? 誰かに危害を加えるつもりはないから放っておいてくれない?」
「あははは。勘違いしてますよ。屯所は私たちが寝泊まりするのにお借りしてる所です」
私はジト目で男たちを見た。
沖田総司が言ったこが本当かどうか探るが、暗くて分からない。
普通の人なら暗闇でも目が慣れてくるもの。だけど、私は子供の頃から暗闇に長くいても一切見えなかった。
「それで私に何を求めてるの?」
タダほど怖いものはない。先に相手の要求を聞いておくのは常識。
「はい?」
「寝床を借りる代わりに、私は何をすればいいのか聞いてるのよ」
一度で理解してもらいたいものだわ。
「んー、そうですね……」
「沖田殿、これは我々だけて決められる問題ではない。局長や副長にお伺い立てなくては」
この人たちには上司がいるわけね。勝手に行って揉めるのは面倒ね。
「私はここで待ってるから、早く聞いてきてくれない? 私がとんしょとやらに行っていいのかどうか」
座ろうとするが、私の腕を斎藤が掴んだ。
「な、何?」
人に触られるのは嫌い。斎藤の腕を振り払った。
「貴殿を一人には出来ぬ」
「逃げるかもしれませんしね」
未来から来た私が、どこに逃げると? 行く宛もないのに。
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