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とんしょとやらは、純和風な家。武家屋敷というものだと思う。
平屋造りになっている門には【浪士組宿舎】という札が掛かっていた。玄関は天井も高く広い。端には竃もあった。
庭に面した縁側を歩き、一番奥の部屋に通される。中は畳6畳で少し狭かった。
少し待つように言われ、正座の形から横に足をずらした格好で待ってる。
「お待たせー!!」
障子を開けて入ってきたのは、私よりは若い感じの女の子。
「おい、紺野(コンノ)! 先に行くんじゃねぇ」
その後に男が5人入ってきた。うち2人は私をここに連れてきた人。
女の子は何故か隣に座り、ニコニコしてる。3人の男は私の正面に座り、沖田総司と斎藤は障子の近くで私に対して直角の位置に配した。
2人が入り口付近に陣取ったのは、私を逃がさないためかな。
「香月遊佐君でいいかな? 事情は斎藤君たちから聞いておる」
正面にいる真ん中の男が話を切り出した。明かりは行灯なため、鳥目の私には男の容姿が詳細に分からない。分かるのは、ガタイがいいってことだけ。
「君が先の世から来たという証拠を見せてくれないかな?」
そう言ったのは小さくて丸いレンズの眼鏡を掛けた男。
「証拠といわれても……」
バッグの中には21世紀の物は入ってる。でも、それが未来のものだと証明になるのかどうか。
見た事がないイコール未来のものなんて安直過ぎるよね。
「ねぇねぇ。バッグの中、何が入ってるの?」
「財布、化粧道具、スマフォとかだけど?」
女の子の目が輝き出した。
「聞きました? 土方さん、聞きましたよね? 間違いありません」
女の子は正面にいる1人の男に詰め寄ってる。
「少しは落ち着きやがれ!」
その女の子に土方と呼ばれた男が拳骨をお見舞いした。女の子は頭を抑えて悶えてる。
状況についていけない私は、その光景を唖然として見てた。
「痛い、いたーーい! 土方さんの鬼!」
「ああん!?」
「豊玉さんのバカぁー!」
「貴様! それは言うんじゃねぇ!」
「やだよー! 梅の花 一輪咲いても 梅は梅ー!!」
女の子は当たり前な事を叫ぶ。それに対して沖田総司が笑い出した。
「あはははは! 莉結(リユ)さん面白過ぎます!」
何が面白いのか私は理解に苦しむ。
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