第1章

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「好みは人それぞれだよ」  身を乗り出してくる真央に苦笑しながら竹野は言った。 「それじゃ答えになってません」 「そう?」 「もう・・・」  ぷうっと頬を膨らませた真央はまた潟の方を眺めた。上村の大学チームのボートが練習を始めたようだった。 「同じスポーツ競技者としてはカッコイイとか思ったりするんですけど・・・」  実際女子の中では長身の真央よりまだ背が高い上村は、それだけで女子高生にはカッコ良く見える。加えて鍛えられてている厚みのある体は憧れですらあった。 「もっとこう・・・好きになったらドキドキして、食欲おちたりするとか思ってました」  真央と同じクラスのの可愛い系女子を思い出せば、恋する彼氏を想うとお弁当が喉を通らないと言って桃色の吐息を漏らす姿が大変悩ましかった。  残すと親が心配するからと回ってきた恋するクラスメイトのお弁当は、しっかり真央の胃袋の中に収まった。 「・・・基本私ってやっぱり恋愛体質じゃないのかも」 「女の子は大変だね。別にいいんじゃないの、今はボートに一生懸命なんだからそれはそれでいけてると思うなあ。チャラチャラ化粧してる子よりずっといい」 「・・・・」  いつの間にか真央の恋愛悩み相談になっていた。視線を落とせば二人とも手に持っているペットボトルの中身は空になっている。  あれほどコンビニの支払いは自分がと念を押していたのにも関わらず、飲料コーナーの前でボトルに付いているおまけのストラップを選んでいるうちに竹野は自分の買い物を終わらせていた。  仕方なく白い猫のストラップが付いている紅茶の分だけ真央は代金を払った。 「あ、あの・・・もう全部飲んじゃったみたいだし、私そろそろ帰ります」  立ち上がった真央に、竹野はスマホで時間を確認して少し眉をしかめた。 「本当だ────結構しゃべってたね。俺も家に帰って宿題しないと」  大人の竹野の口から学生のような単語が飛び出して真央は不思議な表情をした。 「俺も一応高校生なもんで・・」 「あ、そうでした。でもびっくり────普通に宿題があるんですね」 「当たり前じゃないか。昼間は働いている人が多いからそれ程量は無いんだけど、何せ脳ミソが年くっちゃってる分問題解くのも時間かかってね」
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