第1章

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 真央は目の前の背丈の変わらない男が二次関数の問題をうんうん唸りながら解いている姿を想像して思わず笑みをこぼした。 「今なんか変な事想像した?」 「・・・いえ、別に」 「ふーん・・・まあいいけど」  うーんと大きく伸びをした竹野はまた潟のほうに目を向けた。 「ありがとうね、何かいい気晴らしになったよ」 「そうですか?」  真央にしてみれば毎日の様に練習で訪れているこの公園の中のどこに気晴らしできるところがあったのか、さっぱり見当もつかない。 「休みの日って、遅く起きてさっきみたいに外に食べに行くんだけど、独りだと話し相手もいないしさっさと済ませて後は帰り道にぶらぶらとコンビニに立ち寄ってアパートに戻る、ってのがお決まりのパターンだったから」  何てつまらない休日、と内心呆れたのは真央は表情に出さずに─── 「じゃあ、よかったです。でも私はお昼ご馳走になって悪いんですけど・・」 「それはもういいよ。女子高生を食事と休憩につき合わせたのに逆に安上がりすぎて申し訳ないくらいで」  援交目的のオジサンの口から聞いたのならいやらしく響いたのかもしれないセリフもも、竹野だと真央はさらっと聞き流せた。 「じゃあ帰ります。ごちそうさまでした、宿題頑張ってくださいね」 「うん、じゃあ・・」  ペコリと頭を下げた真央が先に自転車に乗って公園を出た。  家までの帰り道、胸がウキウキしてくるような気分になった。 「いや別に、タダで牛丼食べられてのを喜んでるわけじゃないから」  はしゃいでいる自分に後ろめたくなって声に出して自分に言い訳をする  妹が聞いたら痛すぎるって言われるだろう。  今日の事は誰にも言わないでおこうと真央は思った。 「昨日の昼いたよね。練習は無かったみたいだけど」  竹野に牛丼屋でご馳走になった翌日、その日は午後からの練習だった真央のところに同じく潟に来ていた上村が訪ねて来た。  時刻は夕方で真央のほうは練習が終わり帰り支度をしているところだった。  上村の事はすっかり部員に知られており、お節介が早く彼氏のところに行けとばかりに真央の背中を押した。 「上村さん、やっぱりいたんですね。見てたんだけどわからなかった」 「そう? 俺はすぐにわかったよ。あそこのベンチで話してたよね」
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