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「そうです。すごい、あの距離でわかるんですね」
「誰といたの?」
「はい?」
「男といたよね。誰? クラスの男?」
話しながら連れて来られた公園内の東屋で上村の追及はなおも続く。
「楽しそうに話してた」
「ボートの事知らない人で・・・」
「ボート部と関係無い男と話してたの。誰なんだよ、ったく」
段々苛立ってきている上村とは反対に、真央は久しぶりに会えて話が噛み合っていない事に気がつかない。
「ずっとこっちで練習じゃなかったですよね?」
「そんなことよりあいつ─────誰なのかはっきりさせろよ!」
急に大きな声を出され、真央は座ったまま飛び上がった。
「・・あの、アイツって、竹野さんの事ですか」
「名前なんかどうだっていい、どうせ聞いてもわからないし。どこで知り合った奴なのかって聞いてる」
ギッと強く睨まれて真央は怖くなった。会いたいと想っていた相手が今は近寄りがたい雰囲気を纏っている。
「竹野さんは・・・友達とよく行くバーガーショップの店員さんです」
「はぁ? 店員とどうして二人きりで話したりするわけ? 訳わかんね」
「あの・・実は竹野さんにも忘れ物を届けてもらった事があって、その後店で偶然見かけて、それで話すようになったというか・・・」
「──────それって男引っ掛ける手段なの?」
「何がですか?」
上村の言ってる事の意味が分からず真央は目をパチクリした。じりじり互いの距離をと離しているのだが、それでも真央は追い込まれているような気がした。
「そうやってあちこちで自転車の鍵落として、拾ってくれた男を品定めしてるのかって聞いてんの」
「品定めって・・・・付き合ってって言ったのはそっちじゃないですか」
謂われもない言葉にカチンときた真央が強い口調で言い返すと、上村の表情がさらに険しくなった。
「そうだよ。確かに告ったのは俺だよ。ボート馬鹿な高校生だから簡単にOKするだろうとは思ってたけど、馬鹿すぎてあちこちで失くし物してるなんて想定外だったよ」
チクショウと悪態をつく上村の言葉に真央は怒りを感じた。同じスポーツに汗を流す人から練習に頑張る姿を馬鹿と貶された事に。
自分は何も悪い事はしていない、と真央は顎を持ち上げて上村を睨み返す。。
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