ショコラ・ショコラ

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「へーそー。女子のおごりでお茶ですか。へー」 「だって、タダ券無駄にするのもったいないし」 「あそこまで言われて断るの悪いし」  あー、はいはい…と聞き流してはみたが、俺だって完全割り勘ではあったものの、女子と二人でカフェでお茶な経験くらいはある。  だからやっかみは押さえつけよう。  そう思った瞬間、やたらと甘い匂いが俺の鼻をくすぐった。  客が出てきた弾みで開いたドア。その奥から漂ってくる強烈に甘い香り。 「思い出すなぁ」  側でそれを嗅ぎながら二人がしみじみとそうつぶやく。 「思い出すって、何だ?」 「おごってもらったドリンク。ココアみたいで美味かったけど、ともかくすんげー甘い匂いで、出てきた瞬間匂いに驚いた」 「俺も。…それってもしかして、なんとかショコラって奴じゃなかった?」 「そう、それ! なんとかショコラ。やたら長い名前の甘い奴」  ココアのような甘い匂いのドリンク。名前にショコラの文字。  もしかしてもしかしなくても、それってチョコレートドリンクなんじゃないのか? …ということは。 「ちょっと聞くけど、この店に連れて来られたのっていつ?」 「先週の金曜日」  …お前ら、揃いも揃って気づいてないのか? その日はなぁ…。  バレンタインだよ バ カ ヤ ロ ウ !
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