三乃斬

1/1
前へ
/5ページ
次へ

三乃斬

未だ冷めやらぬ、戦国の世。 死神は、大坂城を見上げていた。 ここまで、なんのことはない、死神率いる部隊は無傷で、 陣を張った。 大坂城の堀が消えていたからだ。 しかし、真田山からの攻撃は激しい。 死神の陣は奇襲を受けた。 真田の大将が、乗り込んできたのだ。 死神は、ひとりになった。 まさに、死神だ。 真田方も大将ひとりだ。 相手に異存はない。 大将は槍を捨て、兜も捨て、妖艶な刀を構えた。 死神は、相手の力を測り得なかった。 剣気が、今までにない強烈なものだった。 お互い、円を描くように、回りこむだけだった。 死神は思った。 『右手、くれてやろう』 死神は間合いを取った、引いたのだ。 大将は見逃さなかった。 死神の、その罠に、大将は落ちた。 死神は、右手に深い傷を負ったのだが、 大将の頭蓋を破壊した。 剣拳一体の奥義、岩砕剛拳掌。 相手の動きを右手で誘導し、渾身の力を左手に宿す。 全体重を乗せた捨て身の一撃なのだ。 下手をして、避けられると、打つ手のない一撃だけに、 この戦の間では、隠し通したのだ。 鎧を纏った身体には、効き目は薄い。 顔面しか、狙いどころはなかったのだ。 しかも相手は名だたる大将。 死神も、覚悟は決めていたのだ。 関が原からの長い戦いは終わった。 死神は将軍となったものに大名の称号を与えられたが、 姿を消した。 将軍は死神を恐れ、刺客を放った。 しかし、死神は、今も生きているのだ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加