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「ホレ。梅雨の長雨の夜更けにあんたがうちに来ただろう。大家に頼んで俺の隣りに知り合いを住まわせた。他人を嫌う奴だからあいつが戸を開けるまで放っといてくれって。大家も困っていたよ。夜更けにあんたに土下座までされたって」
喜三郎は腕を組み眉を寄せました。どんなに思い出そうとしてもそんな記憶はさっぱりなく、かといってお鈴が嘘をついているようにも見えなかったからです。
お鈴は喜三郎を変な目で見ると何事もなかったかのようにやってきた魚売りの所に行ってしまいました。
お鈴がいなくなると喜三郎は自分の家に入りごろんと横になり両目を閉じます。
そうして梅雨の長雨の夜、何があったか考えました。
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