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ぼーっとしていたみなもに手をブンブン振っても帰って来なかった。
「あの人、誰かに似てるのよね」
「へー。綾小路先生?」
「うん。細くて筋肉が少ない男性なんて野菜にしか見えないはずなのに、――あの先生だけちゃんと見えてる」
みなもは不思議そうに首を傾げていたけれど、すぐにラグビー部が運動場で準備体操を始めたのを見て気持ちを窓の外へ向けた。
先生ぐらいのイケメンならば筋肉フェチのみなもの視界にも入るのだと感心してしまうが、興味はやっぱ他の人と同様に野菜並みにしかないらしい。
「そういえば、音楽部の部長は?」
「ああ。なーんか生徒会室へ行ってるって」
「生徒会室」
ってどこだろう?
利香の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
でも会えないのならば仕方ない。
どんな人か聞きたかったけれど、みなもが入部するならいっか。また次の機会にしよう。
「みなもちゃん、私、美術部行くよー」
「私はもう疲れちゃったからここから運動場見学しとくー」
美術部には近衛がいるかもしれないのに、いいのか。
そう言おうとして、何故だか利香は口をつぐんだ。
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