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学校指定の室内靴は、一年は青、二年は緑、三年は赤と色が分けられているけれど、大変だ。思い切り足を踏む込んだ際に、靴に緑の絵の具が跳ねてる。
半分ぐらい緑色になってしまっている。
「あああああああ。すいませんんんん」
「大変だ! 見学者が踏んだぞ」
「鍵かけてくればよかったのに」
「きゃー。窓開けなきゃ、シンナー臭いわよー」
緑色になった靴を眺めていると、次は体育館のほうからバケツや棒雑巾を持った数人の女子生徒達が渡り廊下を走って来る。
「すいませんすいません、私が蓋を開けて、床に置いて、蓋を捨てようとしたら、ペンキを蹴飛ばしちゃって」
半べそでパニックになりながら拙い説明をしている女子生徒は利香に頭を下げて謝ってくれる。
緑色のスモックを更にペンキの緑色を被るように汚れている。
三つ網の髪の毛が、ふわふわと謝る度に舞う。
眼鏡がずれても、深々と頭を下げて何度も謝る。
(この人、昨日近衛先輩にもこんな感じで謝ってなかった?)
昨日、近衛のYシャツに油絵の具が付いた時にもこの人を見かけているのを思い出す。
「私なら大丈夫です。それより、御手伝いしますよ」
指定靴を両方脱いで、雑巾を持つ。
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