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壁に、床に、机に巻き散らかされたペンキ。
緑の多い教室として、色を落とすのを諦めて落書きでもしてしまえば良いのに、と思いながら利香は黙々と拭く作業を手伝った。
一番一生懸命しているが、一番よくこけたりバケツをひっくり返したり、眼鏡を落として眼鏡眼鏡と探しているのが、部長らしい。
落ち着きがなく、うっかり屋のようで、利香は思わず目を綻ばせた。
「あーあ。見学者、皆帰っちゃいましたね」
大量の緑色の雑巾を、外の水道でバシャバシャと洗っていてら、誰かがぼそりと呟く。
「私、一応見学者です」
何度洗っても緑色の水しか出ない送金を絞りながらそう言うと、部員が慌てて舌を出す。でも、先程ペンキをばら蒔いた時に殆どの見学者が居なくなったのだから落ち込むのも仕方ないことかもしれない。
「ごめんなさい。私のせいで。それに見学者の貴方にも手伝わせちゃいまして」
「いえいえ。作品にペンキが掛からなくて良かったですよねー」
利香が素直にそう言うと、部長さんも泣きだしそうな笑顔でにっこり笑った。
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