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「でも、綺麗な青。空のずっと上の上の空みたい。綺麗」
「本物はもっと綺麗で遠い」
近衛はそう短く言うと、飯嶌部長の方を見る。
「集まりそうか?」
「え、集金!?」
集金なんてあったっけ?と真っ青になる飯嶌部長に、近衛は嘆息する。
「違う。部員だ」
「え、あの、今日は一人も」
申し訳なさそうに下を向く飯嶌先輩に、近衛先輩も髪を掻きながら横を向いた。
抽象画のように女心が分からないと言っていたけれど、多分、今近衛先輩は、女の人、――特に部長が自分に怯えている様子に困惑している。
お互い不器用と言うかなんと言うか。
「おーい! やってる?」
そんな空気をぶち壊したのは、サッカーのユニフォームを着た先輩だった。
「あ、また部長を固まらせたのか? 響也は」
駄目じゃーんと軽口で、肘で横腹をツンツンする。
ホッとした部長が苦笑したので空気が一気に華やかになるのが分かった。
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