三、乙女の姿しばしとどめぬ。

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慌ただしく、二日間の入学式兼部活紹介が終わった。 書類や今年度の記録纏めたデータを保存し、生徒会室から出たのは、下校時間をとっくに過ぎた7時半。 誰も生徒会長に声をかけなかったのは、副会長の千昌が申請を出していたこともあるが、彼がまた特別な存在であることも示唆している。 「今、利香とは一緒に住んでねーの?」 「歩夢っ」 真っ暗な廊下を歩いていると、下駄箱で気だるげに座ってスマホゲームをしている歩夢の姿があった。 スマホから照らされる光で、歩夢の表情が良く分かる。 生徒会長を見ておらず、画面に視線を落としてはいるが、その言葉は、この一年ずっと心に重く圧し掛かっていた。 「何で住んでねーの? 寮にもいねーし。今、お前、何処にいるの?」 「……お前には関係ないだろう」 「千昌とデキてるわけはないよな? んなわけできないよな。千昌も偽ってない限り」 「お前」 「なんちゃって。千昌の親が管理してるマンションで一番近いとこって駅のとこかな」
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