三、乙女の姿しばしとどめぬ。

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「そうだ。そこで一人暮らしだ」 「――楽しい?」 かちり。 歩夢がスマホの液晶の画面を消すと、途端に二人は真っ暗な廊下に放り出される。外で部活をしているグランドからの光が、靴箱の窓から長い影を落としているのみ。 「今のお前って、楽しい?」 直球の質問に、輝夜は息を飲む。考えたくもない現実を、歩夢はストレートに突き刺してきた。ねじ込むよりも、真っ直ぐに傷口を狙って刺す。痛みは無いが、貫通しそうな質問。 「そのようなことは考えても無駄だと思う。今俺は、自分の置かれた居場所に感謝し、自分の価値を噛みしめている。俺は自分の存在や能力までは否定しない」 「昔っから、そんな馬鹿な奴だったよな」 鼻で笑うが、歩夢は輝夜が来るまでずっとこの靴箱で座ってゲームをしていたのだろうか。寮で生活しているはずの歩夢は、とっくに門限を過ぎている。部活生と共に食堂でご飯を食べるようには見えない。 「お前はそんな質問の為に俺を待ってたのか?」 「『俺』じゃないでしょ。『輝夜』を待ってたの」
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