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天気は悪くても、温室の中の花達は今日も可憐に色づき咲き誇っている。煉瓦の花壇が何個もあり、その中で様々な花が咲き乱れ美しい。
黒の妖しいレインコートの男が道を塞いでいなけらば。
「……おはようございます?」
「ああ、お前か。おはよう」
黒魔術でもキャンパスに描いているのではと距離を置いてしまう出で立ちの近衛が、花壇の前で立ち尽くしている。
「お前、園芸部を朝部にするのか」
「あれ? そう言いませんでしたっけ?」
「昨日の記憶が曖昧だ」
「近衛先輩でもそんなうっかりな事があるんだー」
呑気にそう言うと、近衛は誰のせいだと思っていると視線で睨んだ。昨日の歩夢と輝夜の会話に、動揺しないわけないだろうと。
「で、黒いレインコート着て絵を描いてるの?」
「朝練で数キロ走っているのだが、今日は雨が降っていたからたまたまだ。それにこれを着たままならば、服が汚れない」
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