四、部活結成。

5/40
前へ
/326ページ
次へ
意外と大胆な人だなと思いつつも、近衛のキャンパスを覗きこむと、花ではなく青が塗られている。 「あれ、花は?」 「俺は抽象画だって言ったろ」 「じゃあ、なんで此処で描いてるの?」 「野球部の部室からは近いし、玲音もいる」 「ふうん」 色々と事情があると言う事で、これ以上は聞かないようにしておこう。 雨を含んだ雲だと思っていたが、朝方にもう降っていたらしい。園芸部員は、皆ジャージに軍手で温室周りの雑草を抜きだした。 「おはよう。早速今日から来てくれたんだ」 「菫先輩っ」 「肥料を混ぜる作業の方をお願いしてもいい?」 「はい」 菫は長いホースを持って花壇に水を巻いている。その横で水色のビニールシートに土と肥料を混ぜている数人の生徒もいた。 「……此処まで濡れなかったか」 近衛が、黒のレインコートの帽子を脱いで静かにそう尋ねる。 菫は、目元を優しく綻ばせながら、『うん』と小さく頷いた。 「そう言えば今日部活申請したから、本当に菫先輩の好きな人について聞いておかなきゃですね」 「はあ?」 菫が慌てて声を裏返す。
/326ページ

最初のコメントを投稿しよう!

116人が本棚に入れています
本棚に追加