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「……菫先輩」
折角信頼してくれていたのに、利香の気が回らない発言に菫は気を悪くした。
「……はっきり言われたのだから、お前も良い経験になったな」
「近衛先輩」
「あいつは、あんなに突き離す発言はしない奴だ。あいつも胸を痛めている。それに――俺や部員が聞こえるような大声で、人の悩みをばらす行為はいただけないな」
近衛にもバッサリと言われて、利香は自分の軽はずみな発言を恥じた。利香は、ただ兄の様に我慢したくない、好きなものは好きだと声を高々に言いたいだけで、それが周りも当たり前だと思っていた。みなもに聞いていたならば、例え近衛が居ても、その場で近衛が気に入っていると答えただろう。
「そうだね。うん、そうだ。近衛先輩ならば、この大失態どうする?」
花の甘い匂いに、絵具の匂いが絡み合う不思議な匂いを撒き散らしながら、近衛は思いっきり筆をくキャンパスに叩きつけた。
「行動で信頼を回復するしかないだろう」
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