四、部活結成。

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「あんたはどっちの?」 尋ねられた菫の表情は曇ったが、玲音は菫の表情が見えないように、歩夢から庇いつつ離れていく。 「菫は誰のものでもねーよ」 車椅子を押し玲音の顔は、ピンクのレインコートの隠れて顔が見えなかった。 歩夢は愉快そうに唇の端を上げたが、二人とは反対の方向へ歩いて行き、二度と振り返らなかった。興味を完全に無くしてしまったようだ。 「ごめんね、レオ」 暫く進んだ後、エレベーター前で菫が小さく言った。 「何で? 歩夢はちょっと口が悪いけどまあ、悪い奴じゃないし、あんま気にすんなよ」 「うん。私が話しかけたの。だからさっきの態度、失礼だったかもしれないなって」 たった二階の移動を待つだけなのに、エレベーターは遅かった。 居心地の悪い空気に、菫は俯いた。 「失礼なのはあの質問だって」 「レオ」 「大丈夫。分かってるからさ、菫が響也を好きなことは」 その言葉は、乾いてかさかさと雨の中へ沈んで行く。乾いて軽くて、雨音にかき消されるような、心に染みわたっていつまでも心に浮かぶような、痛みになる。
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