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「さっむ」
雨が降り込み、カーテンが揺れている。
床には、書類が飛び散ってしまっている。
静かで寂しいと感じたのは、置かれた長机の奥で、立派な社長のような机とふかふかな椅子に座って、丸まって眠っている輝夜がちっぽけで小さな存在に見えたからだ。
「やっぱ眠ってるだけじゃねーか。キャパ越えてるのに無理してんじゃねーよ。ばーか」
窓を閉め、床のプリントを集めて、輝夜の机に置くと、ペンケースを重しにする。書類が濡れていなかったことだけは幸運だった。
眼鏡を置いて、タオルを抱きしめる様に枕にして眠っている輝夜は、眠っていても育ちが良いことが伺える。
その長い睫毛を、歩夢が冷たい目で見下ろしている。
輝夜は、自分の置かれた現実を受け入れているのか、ただただ我武者羅に何かに逃げて考えないようにしているようにも感じた。
「馬鹿なのに、--放っておけないんだよな。馬鹿だから?」
歩夢は隣に椅子を持ってくると、寝顔を見つめて鼻を抓った。
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