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「ふっ」
鼻で息が出来ないのが分かった輝夜は、寝ぼけたまま口を開けた。
パクパクと口を開ける輝夜の顔に、歩夢の目が獰猛になるのが分かった。
歩夢の顔が近づくのと同時に、生徒会室の前を慌ただしく走って来る足音が聞こえてくる。一つでは無く、二つだ。
賑やかなその二人の足音に聞こえないほど、歩夢は寝ぼけた輝夜を見つめている。
近づいた、顔。触れる唇。
その真実だけは、目撃してしまった利香と賢次郎だけが知っている、秘めた思い。
「ぎゃー、お前、歩夢!」
「歩夢君」
利香と賢次郎が生徒会室の扉の前で呆然としていた。
「おかしいよなー。俺、利香みたいに胸が無い兄弟はタイプじゃねーんだけど」
「いやいや、お前、今のはおかしいだろ」
「……それが、俺の理性はおかしいかもしれんが、秘密を知っている以上、おかしくはないんだよなー。ややこしい」
歩夢は、理性が効かず本能的にしてしまったと首を傾げているが、利香は大きく口を開けていた。
歩夢が、輝夜の呪いを解く王子様に見えたのだ。
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