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「勝負って、でも無理矢理聞きだしたら、今日の二の舞になってしまうし」
「いつもの馬鹿みたいな考えなしのお前はどうした! 行け。行くんだ。いわば、道場破りみたいなもんだから。俺達の部活の知名度を一気にあげてくには、これしかねえ。行くぞ」
「歩夢君」
一度、お尻に火がつけば、なんと心強い仲間だろうか、と利香は背中を追いかけながらただただ思う。
利香が物心付いた時には既に隣の家に幼馴染として存在していた歩夢。利香にとって歩夢は、頼れる存在で、本当の兄の様に慕っているのかもしれない。
なのに、利香の心には霧がかかった。靄や霧で覆われた心は、利香自身なぜこんなに物悲しくなるのか分かっていなかった。
ただ、歩夢が輝夜の唇に口づけしたのを見て、利香が知らない歩夢の表情を見た。
自分だけ、二人の空間に存在していなかった。
置いて行かれたような、自分は要らない存在のような、あの頭が真っ白になる感覚がまだ脳内を掻き回している。
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