第1章

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 アキちゃんは、酒豪だった。飲んでも飲んでもご機嫌になるくらい。水みたいに飲む。私はその半分頑張るくらい。  アキちゃんの話は、私の世界を変えていった。  この時はほんとその尻尾を掴んだ気がした。  アキちゃんは、田舎が嫌でカバンひとつで貯金を持って東京に出てきた。実家は大きいお家で。本家っていわれるようなお家。  でも、どっか壁みたいのを持ってた。  彼女には嘘やおべっかは通用しないと思った。  実家に一切頼らず、怪我をしたらインストは出来ないから飲み屋で働いた、座ってお酌できるから。そうやって、ずっと生きてきてた。  彼女は「そんでもさ~生きてんだから凄くない?」って笑いながら。くいっとビールを煽るのだ。かっこよかった。  私は……、いろいろあるけど子供だなって思った。 「あおちゃんさ~。人生好きに生きていいんよ~。自分で責任取ればいいんだからさ~」  そう言って笑う顔が、ほんとにかっこよくて。  12時くらいにロンちゃんがデートから帰ってきて、残りのビールを3人で飲みきった。だって残っても値段一緒なんじゃ飲まなきゃ損でしょ?ってみんなで笑った。  それから、ノリちゃんは仕事忙しいと何を聞いてもダメだけど、忙しくないとオフ会とか友達を呼んでは飲み会してて、私も混ぜてもらった。  ロンちゃんは。実は土地持ちのボンボンで公務員。こんなに空き巣にあってるのに、あほ過ぎるよ。  アキちゃんは忙しかったけど、会えば話をした。  私は自炊派で、カレーとか煮物を多めに作ってはみんなに配ってた。嫌がられるかと思ったら、皿持ってノリちゃんが玄関に来た時は笑った。ロンちゃんは玄関開くから開けて置いとく。アキちゃんは袋に下げてドアにかけとく。  そうすると、ごちそーさまってみんなタッパー返してくれたりした。  
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