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しかし、彼女に関しては例外だったはずなのだ。心が彷徨いだした後でさえ、彼女はずっと、私にとても良くしてくれていた。
私は、彼女の為に、全くなにもしなかった。
もちろん、私になにができるというわけでもない。
私にはなにもできない。
気持ちの問題だ。
あの時の私はひとつの視点になっていた。
ひたすら眺め、傍観し、起こったことを起こったままに受け止める。
そこに感情など介在しない。
視点に善悪も主観も客観も必要ないのだから。
彼女の末の孫が、まだその権利もないのに、好奇心と虚栄心に負けて煙草に手を出した。
それだけであったなら、まだかわいらしいの一言で済ませることもできたのかもしれない。
大人になって振り返ったとき、たかが煙草を吸ったというそれだけのことで、まるで英雄にでもなったかのように胸を反らせることができた子ども心を、ある種、滑稽とも、またうらやましいとも思えたのかもしれない。
しかし、末の孫はこの先、二度と煙草などには手を出さないであろう。
慣れない煙草の火を揉み消しきれず、残った小さな種火から、家が全焼するという大きな悲劇が生まれた。
逃げ遅れた彼女は、彼女の思い出が詰まった家と共に焼けてしまった。
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