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日々の変化など、あってないようなものだった。 日が沈み、月がのぼり、月がしずみ、日が昇る。毎日がこの繰り返し。 雨が降ってみたり風が吹いてみたり、四季が巡ってみたり。多少の変化がないわけではないが、それは本当に小さなものだ。 あまりに小さく微々たるもので、おまけに飽きるくらいに何度も繰り返す。そのせいで、もはや私にはよくわからない。 今日とは一体なんのことだ? 雨の日と風の日と夏と冬と、それぞれが違っていることくらいならわかるが、それがなんだという? どんな意味がある? 私はただひたすら無意味な繰り返しの中で生きている。 彼女がまだ元気だった頃の私は、こうではなかった。 日々の小さな変化にも喜びや悲しみを見出だすことができたし、今日が今日であることに意味を求めることなどなかった。 今日と昨日、今日と明日の違いを彼女が教えてくれていたからだ。 私と彼女の関係は、まだ彼女が二足歩行もままならない幼い頃からのものである。 彼女はなかなかのおてんば娘で、ランドセルを背負う年になると、悪ガキたちに混じって活発にイタズラをするようになった。 大人に見つかると、そのたびにこっぴどく叱りつけられたものだが、懲りることがない。 叱られている間は神妙な顔をするが、すぐにまたイタズラをしてしまうのだ。 一度こうだと決めたらテコでも動かない芯の強い所があって、彼女の親は散々手を焼いていた。 私はそんな彼女の武勇伝を聴くのが好きだった。 例えば、こんなことがあった。
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