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ある日のバイトからの帰り道、湊が家まで送ってくれた。
湊は私が生きてきて初めて出来た彼氏だ。
同じ居酒屋で働くようになって何度かグループで遊びに行くうちに親しくなった。
切なく思い合う恋心の末、というよりは友達の延長上の付き合いというノリのような感じで始まった交際だった。
とは言え、湊といるといつもすごく楽しいし、喧嘩をすることもなく、私たちの付き合いはごくごく順調だ。
「な、明日ふたりともバイト休みだし、大学の講義も午後からなんだろ?
だったら今日泊まってってもいい?俺も明日午前中はなんも予定ないし」
突然の湊の言葉に戸惑いつつも、嬉しい気持ちになる。
居酒屋で毎日のように顔を合わせているとはいえ、カテキョのバイトもしている別大学の湊とはなかなか一緒に過ごせる時間がない。
「うん...」
私は『泊まる』という言葉に敏感に反応してしまい、恥ずかしくて小さな声で俯いた。
ずっと女子校だったし、バスケ一筋で合コンすら大学に入るまで行ったことなかった私は、男に対して免疫がない。
キスもその先も湊が初めてで、付き合って1年経っても未だにキスすら慣れない。
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