記憶の底に眠るのは

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「……た……らた……」 あれ??……。 この声……どこかで……。 「むら……むらた……」 これは確か……高校のときの……。 「村田!俺達二人の夢叶えよう!」 「おお!絶対俺達二人で叶えるぞ!」 「うん!」 あのとき俺……約束したんだ……。 でも、何を??……。 誰と??……。 目の前のこいつはいったい……。 「約束だぞ!ーーー!」 ピンポーンピンポーンピンポーン。 「……あっ??」 玄関から煩いくらいに鳴り響くチャイムの音に、俺は夢から引きずり起こされた。 「誰だ……こっちは仕事明けの久々の休みなんだよ……」 俺こと村田祐輔は、建築物の図面や設計図をコンピューターで作る仕事であるCADオペレーターをしている。 自分で言うのも何だが、俺は26歳という若さで、結構デカい仕事を何件もさせてもらえている。 本当に幸せなことだと思うが、徹夜なんて当たり前だし休みなんてほぼ無し。 だから、こうして久々の休みくらいそっとしておいてくれねーかな?? 「こういうとき他に誰かいたら変わりに出てくれんのに……」 現在このマンションで一人暮らし中の俺は、実家のことを思い出しながらそんなことを呟き、嫌々ながらも玄関へ向かった。
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