第二章「カラドリオス祭」

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振り返り、ザクと目配せをする。 やれやれと頭をかいて頷いてきた。 「リリ、案内、してくれ」 俺たちはリリの案内により、 路地を抜けある小さな小屋にたどり着いた。 ――そして、旧市街地の建物の中でも一番古いんじゃないかってぐらいボロボロのこの小屋の前に、お爺さんが立っているのを見つけた。ぼーっと建物を見上げている背中はどこか寂しげに見える。 「...あの」 声をかけると、ゆっくりとお爺さんが振り返った。 昼間見たままの優しげなお爺さん。 でも今は少し表情が陰っていた。 「ああ、牧師様。こんなとこでお会いできるとは」 「どこ行ってたんです?探しましたよ」 「すみません、孫が見えた気がして追いかけたらこんな所に...」 もう一度小屋を眺める。 (こんな所に迷い込むか?普通...) 「とりあえず、知り合いの情報屋に聞いてみるので、一緒に来てください。」 俺がそう言って引っ張っていこうとしても、お爺さんは全く動こうとしない。 「・・どうしたんですか??」 「ここ、自分の家なんです。昔住んでたんです」 やっと口を開いたかと思えば、まさかの言葉だった。どう考えてもこの小屋は10年20年前に使用されてたなんて思えない。50年とか優に超えていそうだ。太い木の根っこが小屋を貫いて天に伸びているし、下の方は何かの動物の住処になっていた。 (ボケてるのか??) 「街を開発するからと、我々は追い出されました。ですがその時、孫は開拓側に行くと我々の反対を押し切り、一人ここに残ったんです。以来、連絡も途絶え....」 「・・・」 どこからどこまでが本当なのかわからないけど、お爺さんは孫に会いたいだけなんだというのは伝わってきた。 ペンダントは、建前で。 大事な孫に会いに遠くから来たんだ。 やっぱり、この人は悪魔じゃない。 ・・・心優しい、人間だ。 俺はお爺さんの肩に手をそえる。 「大丈夫、きっと会えます」 できるだけ自然に、優しく、笑いかけた。 「一緒に俺も探しますから、安心してください」 「...ありがとう、ありがとう牧師様。」 お爺さんがやっと歩き出し、落ち着いたところであることに気づく。
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