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きっと、今回の件で、悪魔堕ちと接触したことによる俺への影響を恐れているのだろう。
(心配いらないのにな)
もう俺は人を信じたりしないから。
誰とも接触するつもりなんてないのだから。
悪魔も何もない。
「はあ・・・一ヶ月ほぼ毎日朝から晩まで悪魔学とか・・・・ほんと、洗脳の域だよな」
=せんのうってなあに?=
宿の入口から入ってきたリリが俺の服の裾をつつきながら聞いてくる。やっと俺は一人の牧師として認められ、今は、配属される教会に向かうため身支度をしているところだった。
リリのクチバシをなるべく優しく撫でる。
「・・・いや、何でもない。」
=これからどこにいくの?=
「新人牧師として教会に向かうんだよ」
=きょ~かい?=
不思議そうな顔をして羽をバサバサ羽ばたかせる。
黄色い羽が朝日に照らされ、とても綺麗だった。
この羽色はリリの髪の色と同じだ。
少し、心が沈む。
「ごめんな・・・・」
=え~?=
「あっいや、飛ぶの大変じゃないか?猫にいじめられてないか?」
=んーん!リリね、いままでずっとしばられておこられてばっかだったの=
「親がそんなことを?」
=おやってなあに?リリにバンゴウをつけたひと?=
「・・・・・・っ」
小鳥は羽ばたくのをやめ、ベッドでぴょんぴょん歩きはじめた。
(そうか、リリは奴隷だったのか・・・)
そして、用済みになったから悪魔の生贄として売られてあんなところに。
(じゃあ、あの地下の血は他の奴隷達の・・・)
ゾゾッと体が震える。
=いたいことばっかだった、でもね、いまはちがうよ!すきなだけねて、たべて、おソラもとべる!だからいまはね、リリ、すうっごく!たのしいの!=
「・・・・・・そっか」
クチバシがパクパク忙しなく動く。もういいよと撫でてあげると目を閉じてクーと鳴いた。
「ルト・ハワード!」
ふと、下から教官の声が響く。
新しく配属された鬼教官はかなり時間に厳しい、これ以上時間がかかると乗り込んできそうだ。早く出よう。俺は荷物を担いで立ち上がった。
そして、ゆっくりと振り返る。
ベッドに立つ小鳥がこっちを見てる。
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