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俺の生まれ故郷は、山奥の湖と森林に囲まれたとても静かなところだった。
そんな土地にいて俺はいつも不思議に思っていた事がある。
湖は川につながっていて
川はどこに繋がってるのだろう
気になりすぎた俺は一日ずっと湖の端を歩き続けて迷子になったことがある。
その後、海という存在を教えられ俺は全身が震えるのだった。
ここの湖よりおおきな水の塊がある。
しかも大きくて青く光っていて、波というものがあって…感動して、どうしようもなくワクワクしたのを覚えてる。
それから俺は、海というものに行ってみたいと思うようになった。
「おおおー!」
18年ずっと憧れていた海が、目の前に広がっている。
「すごい!本当に青いし、湖と違って山が反対側に見えない!」
=わーーーー!=
隣で飛んでる小鳥、リリも体いっぱいで驚きと感動を表すために羽ばたいたり鳴いたりしてる。馬車の御者が困ったようにこっちを見てくるのを背中に感じた。
「っと、いけないいけない」
俺はお腹が痛いと大袈裟なジェスチャーで表した。それを見た御者は馬車を木にくくりつけタバコに火をつけ始めた。どうやら時間がかかりそうだと分かってくれたようだ。よしよし。
教会に移動中だった俺達だったが、先ほど海に気づき止めてくれと御者に頼んだのだ。
「リリ、見えるか。あれが海だぞ。あの水の塊の中には俺たちみたいなたくさんの生き物が生きてるんだよ」
リリと呼ばれた小鳥は俺の肩にとまって海を左から右へゆっくりと見た。
=おっきい~!=
「今度、釣りに来ような」
=うん!=
きっと釣りという意味もわかってないリリを優しく撫でてから、服のポケットにいれた。馬が驚くからというせいで、こんな無害な小鳥でも追い出されてしまうのだ。不自由をさせてしまって申し訳ないが、今は我慢だ。教会についたら思いっきり飛ばしてあげよう。
俺は何もなかったかのように、歩いてもどる。形式通りの挨拶を交わし、馬車はまた進みだした。話によると、ここから30分ほどの街にある教会が俺の配属されるとこらしい。
なんでも、ちょうど前任者がいなくなったとのこと。
(どんな所なんだろう?)
俺の緊張と興奮が伝わったのか、もぞもぞとポケットが動く。ぽんぽんと人差し指でたたいたら静かになった。
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