第一章「呪われた教会」

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(でも、やっとだ...やっとこれで悪魔の恐怖から避けられるんだ) 教会は清められてるものだと牧師様達も言っていたし、何よりあの村での事件の時も教会の近くだけは何も影響がなかったわけだし。 (どっちでもいいが、もうあんな思いはしたくない...) 真っ赤な風景がフラッシュバックする。吐き気を感じて窓の外を見た。少しだけ気が紛れる。 ああ、早く着いて欲しい。 「これで全部か?」 「はい」 馬車に積まれた荷物をおろしながら、御者は不思議そうな顔をしている。それもそうだ。旅行でもなく移住するために用意した荷物が腕に抱えれるほどの小さな荷物で済まされてるんだ。だが俺は小さい頃から土地を移動して生きてきたから、持っていくのは本当に最低限でいいとわかってる。 「...ありがとうございました、ここまで送っていただいて」 「代金は幹部の方から前払いされてるからいいよ。それより大丈夫か?」 言いにくそうに小声で聞いてきた。何の話かよく分からず聞き返す。 「?...何がですか?」 「あ~、いや、なんでもない、気にするな!」 俺に思い当たる節がないと気づきすぐにその会話を終わらせようとする。なんだよ、余計気になるじゃないか。 (でも...なるべく人と接触はしたくない) 詮索するのを止め視線を外す。 「...じゃあ」 俺は荷物を背に抱え、目の前にある町に入っていく。入口の門番に身分証を見せ入れてもらう。身分証を見たとき門番が眉をひそめたのが少し気になったが、これ以上ここにいると話しかけられそうなのでさっさと中に入った。 「…」 ふと気になって振り返ると、御者がこっちを見ていることに気づいた。彼はかぶっていた帽子を胸に当て会釈してきた。俺も急いで会釈する。そしてやっと彼は馬車に乗って元来た道に戻っていった。 (変な人だな...) 「ま、いいか…」 気にしても仕方ない。もう会う事もないんだし忘れておこう。 =ねえねえ、ルトにぃ、もう出ていい?= 「あ、うん、いいよ。窮屈な思いさせてごめんな」 そう言ってポケットから取り出し、放してやると嬉しそうに羽ばたいてクークー鳴いた。 「にしても広いな...」
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