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「さってと、まずはご飯だな!」
=うんうん!あのね~リリは、おまめたべたいな~=
「ううっ、よくあんなモノ好きになれるなあ...」
=スキキライハイケナイゾだよ~=
「うっ」
いつも俺がリリに言ってることを言われギクリとする。さすが我が子。・・・いや、子供じゃないけど。
「ご馳走様でした」
=ごちそーさまでしたー!=
食事を終え、リリが頭の上で気持ちやすそうに寝転り始めた。
――サアアアア・・・
風が優しく俺たちの体をなでていく。動物は店内には入れないということで二階のテラス席でゆっくりと食べているわけなんだが、ここがなかなか見晴らしが良くて気に入ってしまった。ここからなら街を見渡せる。
(これからも定期的に来てしまいそうだ...)
椅子から立ち上がってテラスの手すりに掴まる。すぐ目の前には民家の屋根がならんでいるが、少し遠くにいったところに大きな広場がある。その中心に、かなり大きな噴水があった。あれがバンの言ってた噴水公園だろう、周りにはかなりの人が集っていている。
「今度あそこにも行ってみようか、リリ」
頭の上から返事が来ない。どうしたんだ?と思ったら寝息が聞こえてきた。
「寝ちゃったか」
起こさぬよう、そーっと頭からおろしてやる。手のひらサイズの、体温よりもやや暖かい温度。
(・・・神様、ありがとう)
手の中にある小さな命の暖かさを、信じてもいない神に感謝した。
(俺は・・・このぬくもりを守るためなら何でもできる)
一生一人でもいい。
この街でリリと静かに生きていければそれでいい。
他人なんて、どうでもいい。
――サアアア・・・
目を閉じて、潮の香りのする風に包まれる。ゆっくりと伸びをすると気持ちがよかった。
「よし・・・がんばろう」
決意を新たにした俺は、山一つ越えた先にある海に心を馳せながら目を閉じた。
「嘘だろ・・・ここが、教会、だって...?」
地図を頼りに半日かけて探した教会が、目の前に立っていた。
周りは森だし他にそれらしい建物はない、つまりこれ以外教会と呼べそうなものはないんだが・・・。
(信じられない、これが教会?!)
ほとんどの窓が割れ、蜘蛛の巣が張っているし、どこの扉も立て付けが悪いのかキーキーと気味の悪い音を響かせてた。中に入ったらマシになるかと思ったら、逆だった、もっとひどい。使えそうなものがほとんどないし埃をかぶりすぎて何があるのかよくわからない。
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