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まだ震えの残る腕でリリを抱え地上へと下りる。悪魔の言うことを信じるわけではないが、ここは教会とは名ばかりの危ない場所のようだ。だとしたら夜にここで寝るのはよくない。
“ここの協会は守られてねーもん”
“ガーゴイルの像、ねえだろ?”
さっきの悪魔の言葉を思い出す。
(もしも悪魔に襲われたことや、教会のこの廃れ具合が像に関係してるとしたら...)
「しかも、悪魔は俺のことを“今回の牧師”って言ってたよな」
ただの悪魔の戯言にしては意味深な言葉が多すぎる。
「・・・」
ぐるぐるとさっきの会話が頭を巡る。ダメだ寝れそうにない。このままここにいても寝付けないだろう。仕方ない、街に出て情報収集をしよう。
=?どこいくの~?=
「少し街に。ここで待ってるか?」
=やだっいっしょにいく!=
「だよな」
こんなことがあった教会に一人置いてくのは俺としても落ち着かない。まあ俺といたから巻き込まれたってこともあるかもしれないが...それはどうしようもない。俺は財布と念のため聖書を持って街に出た。
ここの教会の唯一の得点が、街の中にあるということだ。街外れの廃れた公園の奥に位置しているが、噴水公園からは30分ほどしか離れてないし昼になれば人通りもそれなりに多くなる。おかげで俺はすぐに街中心部に来れたのだった。
「ふーん、夜は暗いものだと思ってたけど...」
目の前には、人口の太陽が何個もあるのかと思うぐらい明るい世界が広がってた。昼間より明るいぐらい。優しい色ではなく結構どぎつい光色なので目がチカチカする。心なしかすれ違う人たちの種類も違うような...
(露出度の高い服を着てる者が多かったり、ボロい服を着ている子供がゴロゴロ路地に寝てたり)しかも少し霧が出ていて、街の雰囲気が違ったように見えた。
「おい、ねーちゃん!おれとこれからどーよお?」
街の様子に呆気にとられてると、突如、肩を後方に引っ張られた。40過ぎぐらいの冴えない男で吐く息がものすごく酒臭い。
「っ・・・」
これだから酔っ払いは嫌いだ。まあ、酔っ払ってなくても男は嫌いだけど。
「おーいきいてんのか~?」
「離せ」
俺は嫌悪感を顕にした顔で、ベトベト触ってくる男の手を叩き落とした。
「あれ、あんた男だったのか」
声でやっと気づいたらしい。
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