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「・・・」
「ハハ!俺は男でも別にいいぜ、口でしてもらえりゃいいからな~」
「っ!」
そのセリフに寒気がする。
(誰がお前とするものかっ!)
無視して去ろうとするのを奴はしつこく絡んで止めようとする。すれ違う人は見て見ぬふり、というか慣れっこなだけなのかもしれない。
(なんかこんな風景前も見たな)
どこへ行ってもこうなるのか、俺は。げんなりしつつ俺は、先ほどの夢の事もあり苛立っており・・・おもむろに胸元に手を伸ばした。その時だった。
「あ、ルトー!どこにいたんだよ~さがしたんだぜ?」
「「!!?」」
この場に似合わない、楽しそうな声が俺たちを包む。遠目から俺たちを見てた通行人もそっちを見た。
「っよ!」
そこには、どこかで見た背の高い好青年が立っていた。
「...っバン!?」
「ルトってばまた迷子になってたのかー?ほんとドジっ子だなあ」
「ちっ、っちが!!」
俺たちの間に入ってきたバンは、親しげに肩に腕を回してくる。それから顔だけ酔っ払いの方に向けた。
「おっさん、こいつが迷子だったの助けてくれてたんだよな?ありがとなー、こっからは俺が面倒見るからさ」
「はあ~?あんちゃん何言ってんだあ。先客は俺だろおーが、邪魔者は消えろよ!」
酔っぱらいは苛々とバンを睨みつけた。自分より見てくれのいい男が現れて焦ってるようだ。バンはきょとんと驚いたような顔をした後、困ったなあと頭をかく。
「ふう・・・仕方ないな」
一向に引き下がる様子のない酔っ払いを見て呆れたようにため息をつくバン。それからゆっくりと酔っぱらいに近づき...何かを耳打ちした。
「~~~~!!!????」
すると、真っ赤だったはずの酔っぱらいの顔が一気に青くなり
「そ、そそそ、そのことをどこでっっ」
「まだ俺たちに何か文句あるか?おっちゃん」
短めの黒い髪をかきあげ、バンは余裕の笑顔で男を見下ろす。
「ないでっす!!すいません!!!!」
それを見た男は脱兎のごとく走り去っていった。
(な、何だ、今の変わりようは)
ま、まあともあれ...助かったみたいだな。ほっと胸をなでおろす。
「あ、ありがと、バン。助かった。」
「ルト、ハラハラしたぞ...銃でも突きつけそうな形相だったもんだから、つい手を出しちまった。」
「い、いや、それは...」
なんだ、見られてたのか。それなら最初に助けろよと思ったが、俺を信じて放っておくつもりだったのかもしれない。
「こんな街中でドンぱちは流石にやばいからな?ルト」
「いや、でも、俺だって流石に銃を出すつもりはなかった、ぞ」
「じゃあ、何を出すつもりだったんだ」
「...」
「俺が間に入る前に、ルト・・・お前、胸ポケットに手を伸ばしてただろ?」
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