第一章「呪われた教会」

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よく見てるな...。 苛立った俺が酔っ払いにあれを突き出そうとしたことをバンは目聡くも気付いていたらしい。 「えっと、それは・・・その」 「なんだよ、焦らすなって、余計気になるじゃん」 だって、なんか・・・落ち着いて考えると恥ずかしいし、なるべくなら言いたくない。けれど。この知りたそうな顔を前にして秘密にするのは無理そうだ...誤魔化せそうにないし。仕方ない、正直に話すか。 「...せ、聖書だよ。」 「聖書?!」 ポケット聖書だけどな。 「そ、それでどうするつもりだったわけ??」 「...叩く」 その時は必死だったからなんとも思わなかったけど、何やってんだろう俺・・・いや、何がしたかったんだ俺。 「・・・」 バンの白けた顔を見ながらひどい自己嫌悪に陥る。やばい、恥ずかしい、顔から火が出そう。穴があったら爆弾と一緒に埋まって誰にも迷惑をかけず死にたい。俺が赤面したまま蹲ると、頭上から楽しそうな笑い声が降ってきた。 「...ぷっふ!アハハハハ!傑作!牧師が聖書で人!を!!あっはっはははは!」 笑い転げるように笑うバン。 「そんっなに!笑うな!ばか!!」 今の俺の顔は真っ赤に違いない。居た堪れなくなってここから消えたくなった。でも、心の底から笑うやつの笑い声には、少しの嫌味も馬鹿にしたような風も感じられなかった。そのせいか、段々と俺にも笑いがうつってくる。 「はは」 「...っ??い、いまルト笑った?!」 「え・・・そりゃ、俺だって笑うけど・・・」 むっとしながら答える。まあ男相手じゃ、滅多に笑わないけども。 「なんだなんだ、笑うと可愛い顔するんだなー」 「っ!!」 ~~~気にしてることをっ、悪びれもなく言い放ちやがって!頬を膨らましてバンからぷいっと顔をそらす。そこでやっと俺の周りに集まってた人だかりが減っている事に気付いた。 「で?ルト、牧師がこんな夜中に何するつもりだったんだ?夜遊びか?イケナイ遊びでもする気だったのかな?」 「・・・俺が夜中に出歩いてちゃ、悪いかよ」 「いや別に。不摂生だなと思うぐらい?」 「てか、俺、自分が牧師だなんて言ったはずないのになんで知ってんだよ」 「ハハ、そりゃ俺、情報屋だからな」 (???) 昼間は確か案内人って言ってたような?俺の表情から心を読んだのかバンがにこにこと説明しだした。 「案内人は昼間のお仕事さ。それだけじゃ食ってけないから情報屋もやってる」 「・・・二足のわらじってことか。見た目によらず苦労してるんだな」 「少年牧師に心配されるほど苦労はしてないさ」 「俺は18だぞ、子供扱いするな」 「今までの土地ではどうだったか知らんが、この街じゃ20はまだ守られるべき子供だ」 「えっそうなのか?」 「まあな」
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