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不思議な感覚だ。今まで俺は早く一人前になりたいと背伸びして生きてきて、やっと歳がその気持ちに追いつけたと思ったのに。18で牧師となり大人としてようやく認められ、見つけた仕事先に行ったら俺はまだ子供だなんて言われるなんて。
「この街のお前と同年代のやつは恋に勉学に遊びに勤しんでるぞー?」
「...平和なとこなんだな」
そうとしか、答えられなかった。憧れてるわけじゃない。俺は今の仕事に環境に満足してる...と思う。ふと悪魔のことがよぎって少し唸る。
「って、そうだった!悪魔!」
「な、なんだ急に?!」
襲いかかる勢いで俺が振り向いたのでかなり驚いているようだ。
「実は、ある情報を探してるんだ。」
「ほう・・・仕事話ってわけか。じゃあまず場所を変えよう。ここじゃ聞かれたくないだろ?」
「そ、そうだな...店の指定は俺がしていいか?」
「いいけど、街に来たの今日だろ?店なんて知ってるのか?」
昼間いったテラス席を思い描く。
「気に行った店があるんだ」
あそこなら静かに話ができるだろう。それにリリも連れて行けるしと思った矢先・・・
「...」
「...っく、くくく」
後ろでバンが笑いをこらえて腹を押さえている。
「・・・」
俺は道に迷ったわけでも、財布を落としたわけでもない。
―CLOSE―
「...」
「よ、夜中だからな...くくく!」
俺の肩をドンマイと叩くバン。なんかもう、いろいろ嫌になってきた。もう帰りたい。帰れないけど。
「はあ・・・」
がっくりと肩を落とすと、ぽんぽんと励ますように背中を叩かれた。
「ルトはよくやったよ、こっからはまあ俺に任せな」
「...?」
固く閉められた扉を見て、無理やり開けるのは無理そうだなという考えがよぎった。するとバンは看板を踏み台にして二階の窓に手を伸ばし、どこから出したのかわからないコインで窓を軽く引っ掻いた。それを二回ほど繰り返して看板から降りてくる。
「何やってんだ?猫の真似?」
「まあ、そんなとこだ」
俺たちは猫じゃないぞと言おうとしたらCLOSEと書かれた扉がガチャりと言って開いた。中から若めの男が出てくる。
(歳はバンと同じぐらいか?)
扉を開けながら眠そうにしていたその青年は、俺とバンを見た瞬間、目をカッと見開いた。
「そそその子は!!」
俺はびっくりしてバンの影に隠れそうになる。その様子を笑って見てるバン。
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