第一章「呪われた教会」

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(そういえば) よくよく考えれば、あの事件のあとから色々おかしかった。村全員を悪魔堕ちの可能性があるというだけであれだけあっさり消した、あの極悪非道の教会本部が、すべての事情を知ってる俺の事を簡単に野放しにするわけがないのだ。牧師様の話では、悪魔に関わった牧師は浄化もしくは免職されるそうだ。俺は当時見習いだったし洗脳勉学を受けたからお咎めなしなんだと聞かされた。でも新人牧師にこんな教会に行かせるなんて正気の沙汰じゃない。この教会が十年も前からおかしくなってたのが本当だとしたら、その事実を本部が知らないわけがない。 (甘かった、これは教会本部の罠か...!) 知りすぎた面倒な新人牧師は呪いの教会でさっさと死んでくれという事だろう。教会は直接手を汚さず俺を消せるわけだし体裁も守られる。 呪われた教会で悪魔に殺される。 悪魔と関わった俺にはおあつらえ向きの死に方。 「・・・っ」 「ルト?」 拳を強く握り締めた。心配そうにバンが様子を伺ってくるが同情の言葉はかけてこない。それはありがたかった。こんな時同情されたって俺はきっと八つ当たりしかできない。 「で、ルト。実はまだ続きがあるんだが、どうする?」 「...話してくれ」 「うん。でだな、実はお前が来る前の前の牧師から、それはそれは大層な護衛を連れてくるようになったんだよ。情報によればその牧師とやらは結構な位置にいる奴だったらしい。」 「お偉いさんってことか?」 「そうなるな。幹部とかそこらだった気がする」 「十年経っても解決されないこの事件に、教会本部も重い腰をあげた...のか。にしてはゆっくりした奴らだな」 村での事件の時はあれほど迅速に対応してたのに...えらい差だ。 「まあそれまでは知らぬふりをしてたっぽいんだが、急に手をひっくり返してきてな。俺としても気になったんだがそこの謎はかなりガードが固くて調べられなかった」 「ここまででも十分すごいよ。街のしがない案内人でも皆これぐらい調べられるのか?」 「いやそれはないだろう。この街ほどコミュニティが大きくないと情報屋の必要性がないから育たないし、何より俺は才能があるからなーはははっ」 「...すごい自信だな」 「これも戦略なんだよ。底を見せちゃ舐められるし欲しい情報が手に入らない」 「ふーん」 バンと初めて会った時は何も考えてなさそうな男だと思っていたが、実はよく考えて行動してるんだなと知った。不覚にも見直してしまう。
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