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「あと、ここに送り込まれる牧師共は皆、ワケありだったらしい。問題をおこしたもの、政略戦争に負けたもの、色とりどりだがそこは共通してる。」
「へえ、かわいそうに」
「かわいそうにってルト。お前も今同じ状況だってわかってるのか?」
「わかってるさ。でもまだ一日目なのにここまで情報をつかめた奴は今までもそうそういなかったと思う。そんな俺なら、手を打てるかもしれない」
「ルト・・・」
「それに手遅れっぽくなったら尻尾巻いて逃げればいいだけだし?」
逃げればいいという言葉を聞いてバンは驚く。そして
「...ぷ!!ハハハ!ほんっと!面白いなあ!お前ほど信心浅い牧師はいないぜ!よし、決めた、俺も全面的に協力しようじゃないか!」
「!!」
こっちに身を乗り出してるバンを見た。真剣な目をしている。
(...頼ってもいい、のか?)
そんな時、心の中に悪夢での言葉が浮かんだ。マスターの、あの言葉。
“どうしてリリだけ助けて俺たちを見殺しにしたんだよお”
俺が安易に地上に出たせいで無関係な村の人たちを巻き込んでしまった。
(あんなにいい人だったのに)
俺が殺したようなものだ。いや、俺が殺した。マスターも、ダッツも、村の人たちも。全部、俺のせいなんだ。
(だめだ・・・巻き込んじゃ、ダメだ)
いい奴だからこそ、巻き込むわけにはいかない。
「・・・有り難いけど、遠慮しておく」
「な、なんでだよ?」
「あんたを・・・信じられない」
「!?」
本音を隠して、バンを牽制する言葉を選ぶ。少しだけ、ちくりと胸が痛んだ。
「怪しい奴の協力なんて・・・要らない」
「・・・」
「俺は一人で何とかできる、だからバンは今の話は聞かなかったことにして忘れろ」
「・・・」
「おい、バン聞いているのか?」
どれだけ待っても返事が返ってこずおかしいと思えば、口を開けた間抜けな顔でバンが見てくる。
「??!」
焦った。確かに、牽制するためにあえて傷つける言葉を選んだが、それほどショックを受けたのだろうか。あまり気にしないタイプだと思っていたが...意外にメンタルは弱かったのかもしれない。申し訳ないことをしてしまった。バンは善意で協力するといってくれたのに・・・。
「わ、悪かった、傷つけたなら謝るっ」
慌ててそう言う。奴は何を思ったのか立ち上がってこっちに歩いてきた。俺が黙ってそれを見守っていると。
――がしっ
独特の男の匂いが体を包む。そこで俺はバンの腕の中に抱かれたんだと気づいた。
「んなっ?!!ちょ、バン??」
「...」
ジタバタ暴れる俺をものともしない上、もっと強く力を込めて抱きしめてきた。
(馬鹿力めっ!!)
自分のひ弱さとバンの馬鹿力に舌打ちしかける。
「ルト、お前苦労してきたんだな」
「..っ!」
その言葉で俺は一気に大人しくなった。
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