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ふと、あの事件の風景がよぎった。真っ赤に染まる酒屋。血だらけのマスター。冷たくなったリリ。地下の惨状。
(大丈夫、同じ悪魔相手でも・・・俺には今心強い助っ人がいる)
今度はあんな惨状にはさせない!
むにゃ...むにゃ...
「いてって!いてて!」
む...?
「やめてって!マジ痛いから!」
なんだ?俺は目を開けて、ゆっくりと顔を上げた。
=ルトにぃに、ちかづくなー!=
「ちょ本当にほんとやめて!」
??・・・リリが人をつついてる。あ、つつかれてる奴ってあの店の店員(バンの知り合いっぽい)じゃん・・・ってあれ?!ここどこだ?!
―――ガバッ!!
俺が急に起き上がったためリリと店員が驚いてこちらを見る。
=にい!おきたんだね!=
リリが俺の肩に飛び乗り、クチバシを頬にこすりつけてくる。くすぐったい。
「助かったよ、つつかれてあやうく死ぬとこだった...」
リリのつつきから解放され、ホッとしたようにため息をつく店員。
「・・・」
俺はジトーっと店員を睨んだ。
「あ、ご、ごめん。びっくりさせたかな、えっと、僕はシータ。ここの住み込みバイトをやっていてバンとは結構長い付き合いで」
「俺はルトだ」
「よろしくねルト、ああ、そうだ...昨日のことは心配しないで見てないことにするから」
「昨日のこと?」
「...だ、抱き合ってた、だろ?」
「!」
なぜそれを!!
「いや、覗き見してたわけじゃないんだ、ずっと外にいたら寒いかと思って茶でもだそうかと思ったら、ちょうど見ちゃったんだ」
「...」
焦って話す彼の言葉はどうも信用できない。なるほどバンの言うとおり本当の情報でも伝える人次第で嘘に見えるのか...深いな。と、どこか変なとこで感心してしまった。
「で、ここは?どこなんだ?」
「テラス席の上の階、つまりレストランの三階だ。窓からテラスが見えると思うよ。」
カーテンを開けると、確かに昨日バンと話したテラス席が見えた。
「一週間の間はここで寝ればいいよ。バンからいろいろ手配してもらってるから。気にしないで」
「それはできない、危なすぎる」
「・・・悪魔が怖いの?」
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