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なんで知ってるんだ、と思ったが俺を泊めてくれてる者に事情を話さないのはあれだと思ったバンなりの気遣いかもしれない。
「なら昼間に仮眠を取りにこればいいじゃん」
そういう問題じゃない。もしあの教会の呪いが俺の近くにいる者にも降りかかるとしたら、ここで寝ると迷惑がかかる。
「・・・」
俺が黙り込んで考え込んでるとシータが笑いをこらえていた。
「なんだよ」
「いや、君ってありえないぐらいキレーだしクールだし人を寄せ付けない感じがあるけど、意外に可愛いとこもあるんだなあって」
――ギロリ
「ひい!!」
昨日から何なんだ。俺はかなり機嫌を悪くしたという雰囲気を出し、シータが申し訳なさで押しつぶされそうになる寸前まで追い込んだ。それからゆっくりと視線を外した。
「・・・はあ。わかった。じゃあ使わせてもらう」
「う、うん、それがいいよ!」
実際寝る場所で困ってたし、助かるっちゃ助かるし。
(よし、寝たおかげで頭がすっきりした、一旦教会に戻ろう。)
時計を見ると針は午前十一時を指していた。バンとは夜に待ち合わせてる。まだだいぶ時間があるな。モップと雑巾をたくさん買い込んで教会の掃除でもしよう。流石に昼間に悪魔は来ないだろうし。
「っふう!こんなもんか?」
俺は真っ黒になった布雑巾片手に、教会の正門で仁王立ちしていた。今日のノルマ(掃除の)は正門だ。天使だってあんな入口の教会に入ってきたくはないだろう。とリリに言われ、かなり手を込んで掃除したのだが。
「うん!いいじゃん」
ツルだらけで黒く錆びてた正門が今や太陽の光をピカピカ反射させるほどになっていた。油もさしたから気味の悪い音が鳴ることもない。変わったのは正門だけなのに、教会全体が明るくなった気がする。少しだが教会の雰囲気が柔らかくなったような感じがして気分がいい。
=にい!なんか落ちてるー=
「??」
正門に見とれていると、教会の敷地の奥からリリの声がした。
(落ちてる?何がだ?)
俺は急いで声のした方に向かった。
「...!!」
なんと目に前には
―――にゃ、あ...
昨晩リリの場所を教えてくれた赤い猫が倒れていた。
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