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「これでよし。」
猫の右腕に傷があったので、消毒をして包帯をぐるぐると巻いてやった。お世辞にもうまいとはいえない出来だったが、まあ、ないよりはマシだろう。傷はそんなにひどくないみたいだったから無理やり引っ掻かない限り化膿もしないはず。
「にしても、猫が落ちるなんてことあるのか?」
きっと門から落ちたんだろうが、猫は高いところから落ちても平気だと聞いていたから違和感がある。
―――じー・・・
そんなことを考えてる間も、猫はじーーっと俺のことを睨んでいた。背中を撫でようとするとフシャー!と威嚇してくる。なんで怒ってるんだ??
「...あ、わかったぞ!」
何か言いたげな目をしてる猫を見て気づいた。ごそごそと鞄をあさる。
(ほんとはリリのためにとっておいた非常食だったんだけど)
後で替えになりそうなのを買ってあげようと心に決め目的の物を取り出した。
「ほら。お腹がすいてたんだろ」
俺は猫の目の前に、水気のない乾いたパンを置いた。
―――プイ!
顔を背けられてしまった。
「ったく!贅沢なやつだな、言っとくけど今は俺も大した金もってないから期待するだけ無駄だぞ」
俺は言葉のわかるはずもない相手にぶつくさ文句を言った。
―――じー...。
猫と俺がしばしにらみ合う。そのまま一分、二分と過ぎていく。
―――じー...ちらっ
ふと、猫が視線を外し、怪我のしてない方の手を伸ばした。
(よし・・・!)
俺は喜びに耐えるために、にやける口元を咄嗟に隠す。そんな時だった。
=わー!パンだあー!=
猫の手がパンまで届く、数センチのところで...黄色い小鳥がパンを奪っていった。
「!」
「?!」
俺も猫もそんな横槍は予想してなかったため、ポカンと口を開けてただそれを見守るだけしかできなかった。
=ん~おいしい~!=
小鳥は、モノの数秒で自分の体の大きさほどのパンをたいらげてしまう。
―――じー...。
猫が俺を睨む。育て親としての教育を問われた、ような気がした。
「おーい、ルト、遅くなった!って、おお?なんか増えてないか?」
シータの店で待ってると、大きな声が後ろから聞こえてきた。俺は肩に小鳥をのせたまま、膝に赤い猫をのせているので首だけしか動かせない。足を広げてぐうぐうと寝てる猫はお腹いっぱいで幸せそうだ。
(財布は寒くなったけどな...)
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