第1章

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八月。 髪がべたつき、陽射しが肌を焼きつけるこの季節、僕は5畳しかない畳の上で大の字に寝転んでいた。 暑い……。 蝉の声が暑さを倍増させる中、開けていた窓から、ふと、お隣さんの楽しげな声が聞こえてくる。 どうやら、明日海にいくらしい。 いいなぁ、海。 もう、五年ぐらい行ってないや。 301号室のお隣さんは確か、五人家族だったはずだ。子供は全員女の子で、「お父さん、嫌い!」とか「お父さんとお風呂なんてヤダ!」だとか。 そういった声は全く聞こえず、いつも楽しげな声が聞こえてくる家族だ。 ……寝るか。 せっかくの夏休みだ。一日ぐーたらしても、文句は言われないだろう。 僕は瞼を閉じると、深い闇の中に意識を沈めていった。
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